再生医療とは何か?
再生医療とは、ケガや病気を治すためにヒトが本来持っている「再生する力」を利用した治療法です。再生医療は、ただ痛みなどの症状の緩和をするだけでなく、自分に本来備わっている自己治癒能力をもう一度活性化し、損傷した組織や臓器を修復し、再び機能させることが期待できます。例えば皮膚に擦り傷を負ったときに自然に治るように、再生医療の力を用いて、擦り減った関節軟骨や組織の再生・修復をし、痛みの根本治療を目指すことができるのです。このページでは、「再生医療とは何か」「どんな種類の治療があるのか」について、分かりやすくご紹介します。
再生医療と幹細胞
私たちの体は、皮膚や筋肉、臓器など、さまざまな組織で構成されていますが、それら組織はすべて膨大な数の細胞によって構成されています。近年の研究により、これら細胞のひとつである「幹細胞」という特別な細胞が、体の持つ「自己治癒能力」=「再生する力」に深く関わっていることが明らかになってきました。整形外科に限らず、あらゆる医療分野において、この幹細胞が持つ再生機能を活用した「再生医療」が注目されています。
幹細胞とは
幹細胞は特殊な能力を持った細胞であり、自らと同じ細胞を複製する「自己複製能」だけでなく、必要に応じてさまざまな種類の細胞に変化する「多分化能」を持つ細胞のことを言います。
私たちの体は約40兆個の細胞から構成されており、そのすべてはたったひとつの受精卵から始まります。受精卵は細胞分裂を繰り返しながら、皮膚や脳、心臓など、多様な臓器、組織を形成していきます。このような、ひとつの細胞が特定の機能をもつ細胞・組織へと変化していく過程を「分化」と呼びます。受精卵のように多様な種類の細胞・組織へと成長する能力=多分化能は、基本的に未熟な状態の細胞だけが持つ能力であり、成熟した状態では細胞分裂によって自らと同じ細胞を作る「自己複製能」のみしかありません。例えば脂肪細胞は脂肪組織にしか成長しないのが一般的です。しかし近年、脂肪や骨髄などの一部の組織には、多分化能を持つ細胞がごく少数ながら存在していることが明らかになってきました。これがいわゆる「幹細胞」です。
なぜ幹細胞治療なのか
幹細胞は、病気やけがによって組織が損傷し、健康な細胞の数が減少したことを感知すると、損傷部位の細胞へ分化することで細胞補充をしてくれる働きがあります。この幹細胞が正常に機能している間は組織が損傷しても一定期間で回復することができますが、年齢や慢性炎症の蓄積により幹細胞が枯渇していくことが分かっています。例えば変形性ひざ関節症の方では、慢性炎症により膝関節の幹細胞が減少し、損傷した膝軟骨が修復されず、痛み症状や機能障害が出現します。鎮痛薬や痛み止め注射は一時的に膝の炎症を抑えることはできても、損傷した軟骨を修復する訳ではないので、根本的な改善にはなりません。根本的な治療に重要なのは、「幹細胞数を増やし」「幹細胞を活性化すること」で自己治癒能力をもう一度活性化し、軟骨そのものを修復することです。
そこで「幹細胞を直接補充することができる治療」として用いられるようになった治療法が「幹細胞治療」です。
整形外科領域での再生医療の活用
幹細胞治療に用いる幹細胞にはいくつか種類があり、それぞれの幹細胞ごとにどんな種類の細胞に分化する能力が高いのかが変わります。変形性ひざ関節症などの整形外科疾患を治療する場合は、骨や軟骨、筋肉などへの分化能力が高い幹細胞を選ぶ必要がありますが、その幹細胞こそが「脂肪幹細胞」になります。脂肪幹細胞は腹部の皮下脂肪中にも存在するため採取もしやすく、ご自身の脂肪組織由来のものを治療に使えるので、安全性が極めて高いです。また従来の保存治療や手術では出せない「再生効果」が期待できるので、当院では「自己脂肪由来幹細胞治療」を中心とした痛み治療を行なっています。
自己脂肪由来幹細胞治療
自己脂肪由来幹細胞治療とは、患者様ご自身の脂肪組織から採取した幹細胞を活用し、組織の修復や再生を目的とした再生医療です。当院では、厚生労働省に届け出た「第二種再生医療等提供計画」に基づき、適切な安全管理のもと本治療を実施しています。採取した幹細胞は、提携するCPC(細胞培養加工施設)にて培養され、必要なセル数まで増やした後、再び患者様の体内へ投与します。症状によって「何セル打てば良いか」「何回打てば良いか」変わるため、そちらに関しては直接診察させていただいた上で判断、ご提案させていただきます。
他の再生医療と幹細胞治療の大きな違いは直接幹細胞を補充できるかどうかという点です。サイトカインのみで幹細胞を補充しない再生医療では抗炎症・抗線維化(組織が硬くなることの予防)効果はありますが、組織を発達させたり、組織のストレス・障害に対する耐性を向上させたりする効果はありません。しかし、幹細胞治療は直接幹細胞を補充できるため、組織レベルでの改善による機能回復やストレス・障害耐性の向上による病気予防効果まで得ることができます(組織の肥沃化、予備能の改善)。根本的な組織レベルの改善が期待できて効果が長持ちするため、治療回数も少なく済みます。
ご年齢を重ねるとともに体に炎症ダメージが蓄積し、それにより幹細胞数が減少してしまうことが分かっているため、特に60代以上の方の再生医療には幹細胞治療が適しているとされます。また幹細胞治療はPRP療法抵抗性の症状の半数以上に有効であるという研究データもあり、他の再生医療への反応が乏しい方でも効果が期待できる治療でもあります。
幹細胞治療は手術に代わる方法でもあり、将来的に手術にならないように早期介入するためのものでもあり、手術と併用でより結果が良くなるものでもある治療です。保存治療でもなく、手術でもなく、他の再生医療とも違うメリットの多い治療方法のため、従来型の治療で効果が出なかった、できれば手術はしたくないという方には積極的に勧められる治療方法と言えるでしょう。
当院の幹細胞治療
幹細胞治療は、投与する幹細胞の「質」と「量」が治療効果に関与すると考えられています。一般的には、幹細胞の状態が良好で、かつ投与される細胞数が多いほど、治療効果が高まると言われています。
比較表
従来の クリニック |
当院 | |
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幹細胞の数 | 1000万個 | 最大2億個 |
保存方法 | 冷凍 | 冷蔵 |
生存率 | 約50〜60% | 約95% |
培養方法 | 動物の血清 | 自己血清 |
PRP-FD療法
PRP-FD療法とは、PRP(多血小板血漿)をさらに進化させた再生医療の一種です。PRP療法は、患者様ご自身の血液から血小板を多く含む血漿成分を取り出し、濃縮して活用する治療法で、血小板に含まれる「組織修復を促す作用」を利用して自然な治癒力を引き出すことが期待されます。PRPは採取した血液を、専用の遠心分離機にかけて抽出しますが、PRP-FDでは、PRPから更に成長因子のみを抽出・活性化し、細胞成分を除去した上で凍結乾燥処理(フリーズドライ)を行います。この処理により、同じ量の血液から作られる通常のPRPと比較して、より高濃度の成長因子を含むとされており、高い鎮痛効果や組織修復の促進が期待できます。また、凍結乾燥されたPRP-FDは冷暗所で最大約6か月間保存することができ、患者様のご都合にあわせて治療のタイミングを柔軟に調整できる点も、大きな特長です。
注意点としては、PRP-FDは総投与量がある一定以上の方が効果高いことが分かっており、投与回数は合計3回以上、進行度が高ければ6回程度は行うことが推奨です。また血小板成分を用いて治療を行うため、血小板数がある一定以上(10万以上)の方により効果的であることが分かっています。その他にも、PRPは幹細胞に働きかけ、幹細胞を活性化させることで効果を得ることができるという側面があるため、幹細胞数の減少が主な症状の原因の場合は幹細胞補充をしないと効果が限定的になる可能性があることにも注意が必要です。ご自身の健康状態や症状によって幹細胞治療が必要なのか、PRP-FD療法で十分なのかは変わってくるので、そちらに関しても直接ご来院の上でご相談ください。
幹細胞培養上清治療
幹細胞培養上清治療とは、幹細胞を培養する過程で分泌される成長因子やサイトカインなどの有用な成分を活用し、炎症の抑制や組織の修復を促すことを目的とした治療法です。幹細胞(主に間葉系幹細胞)を培養すると、その培養液にはPDGF、HGF、VEGFなどの成長因子やサイトカインが含まれます。この培養液から細胞やアンモニアなどの不要な成分を最大限除去し精製して得られたものが「幹細胞培養上清液」です。幹細胞そのものを投与するのではなく、分泌された成分のみを活用する本治療は、即効性があり強い疼痛緩和効果が期待できます。ただし効果の持続期間が決して長いわけではないので、幹細胞治療やPRP-FD療法と併用して治療することが多い治療法でもあります。当院では、培養上清液を約30倍に濃縮した製品を使用しており、特に組織修復に関与するとされるHGFを高濃度で含むものを採用しています。また精製は大学研究室で行われている製品のみを使用しており、どこよりも安心・安全・高品質な幹細胞培養上清治療を目指しています。
当院の強み

当院は静岡県で唯一厚生労働省から第二種再生医療等提供機関として認可された医療機関です。
静岡県出身で再生医療の専門家でもある院長佐々木が担当医となり、高品質・適正価格の再生医療の提供を目指しています。